なぜSNSの悪口は心に残るのか?批判と他人との比較で疲れる心理と対処法

生活の中の心理学

SNSに投稿すると、多くの人から好意的な反応をもらうことがあります。

しかし、たくさんの人が応援してくれていても、たった一人の批判的なコメントが気になってしまうことはないでしょうか。

私自身、長年SNSで動物に関する情報を発信してきました。

ほとんどの人は好意的に受け取ってくれますが、ときには「猫を虐待している」など、事実と異なる内容を書かれることがあります。

最初の頃は、そのようなコメントを見ると腹が立ちました。

しかし、今ではほとんど気になりません。

なぜなら、私はSNSに投稿した後、基本的にコメントを見ないようにしているからです。

一方で、SNSには別のストレスもあります。

それは、他人の投稿を見て、自分と比較してしまうことです。

旅行を楽しんでいる人、幸せそうな家族、事業で大きな結果を出している人。

そうした投稿を見ると、自分も頑張っているのに、なぜあの人のように幸せそうに過ごせないのだろうと感じることがあります。

なぜ人は、たくさんの好意的な反応より一つの悪口を強く感じたり、他人の幸せを見て落ち込んだりするのでしょうか。

今回は、自分自身のSNS運営経験を振り返りながら、心理学の研究をもとに考えてみたいと思います。

なぜ100件の感謝より1件の批判が気になるのか

人間には、良い情報よりも悪い情報に強く注意を向けたり、悪い出来事を重く受け止めたりする傾向があります。

心理学では、こうした傾向を「ネガティビティ・バイアス」と呼びます。

2001年、心理学者のBaumeisterらは「Bad Is Stronger Than Good(悪いことは良いことより強い)」というレビュー論文を発表しました。

この論文では、人間関係、感情、学習、他者からの評価など、さまざまな分野の研究が検討されています。

その結果、悪い出来事や否定的な情報は、良い出来事や肯定的な情報よりも強い影響を与える場合が多いことが示されました。

例えば、多くの人から褒められていても、たった一人に強く批判されると、その言葉ばかり考えてしまうことがあります。

ただし、「100件の感謝より1件の批判の方が必ず強い」という意味ではありません。

影響の大きさは、内容の深刻さや相手との関係、個人の状態などによって異なります。

それでも、否定的な情報に注意が向きやすいという心理は、SNSでの経験を考えるうえでも参考になります。

普通に猫を育てているのに「虐待している」と書かれる

私は動物に関する活動を続け、その様子をSNSで発信しています。

猫たちの日常を動画で紹介することもあります。

しかし、ときには「猫を虐待している」などと書かれることがあります。

私自身は、猫を普通に育てているので、そのようなコメントは事実に反するものだと考えています。

最初の頃は、このような書き込みを見ると腹が立ちました。

普段どのように動物の世話をしているのかも知らない人が、一つの動画を見て、すべてを理解したかのように批判してくる。

そのように感じていました。

もちろん、実際に相手がどれだけの情報を確認したのかは分かりません。

しかし、SNSの短い動画だけでは、日常のすべてを伝えることはできません。

例えば、数十秒の動画を見ても、その動物が普段どのような環境で暮らしているのか、どのように健康管理されているのかまでは分からない場合があります。

画面の中に映っているのは、現実のごく一部分です。

それにもかかわらず、その一部分だけで相手の行動や人格まで判断してしまうことがあります。

なぜ、そのような判断が起こるのでしょうか。

人は少ない情報から相手を判断してしまう

心理学では、人が他人の行動を見たとき、その行動の原因をどのように判断するのかが研究されています。

これを「帰属」と呼びます。

例えば、誰かが怒っている場面を見たとします。

その人が怒っている理由には、もともとの性格だけでなく、直前に何が起きたのか、どのような状況に置かれていたのかなど、さまざまな可能性があります。

しかし、私たちは状況について十分な情報がないまま、その人自身の性格や考え方によるものだと判断してしまうことがあります。

このような傾向は「根本的な帰属の誤り」と関連しています。

SNSでも、一つの動画に映った行動を見て、その背景を十分に知らないまま相手を評価することがあるでしょう。

ただし、批判的なコメントがすべて思い込みだというわけではありません。

実際に問題がある行動に対して、正当な批判が寄せられることもあります。

大切なのは、限られた情報だけで判断を確定させず、ほかにどのような事情があるのかを考えることだと思います。

私はSNSの投稿を見るとき、画面に映っているものが、その人や出来事のすべてではないことを意識したいと考えています。

批判への対処法は、必ずしも反論することではない

以前は、事実と違う批判を見ると腹が立つことがありました。

しかし、今ではほとんど気になりません。

これは、私が批判を一切気にしない強い精神力を身につけたからというわけではありません。

単純に、コメントを見ないようにしたからです。

私はSNSに投稿したら、基本的にそこで終わりにしています。

いちいちコメントを確認したり、批判に反論したりするために、自分の時間を使いたくないからです。

SNSの投稿に対して、すべての人が好意的な意見を持つとは限りません。

考え方が違う人もいますし、攻撃的なコメントをする人もいます。

その一つひとつに対応していたら、時間がいくらあっても足りません。

私は自分の活動について、批判されるようなことはしていないという自信があります。

そのため、知らない人からどう評価されているかを確認し続ける必要は感じていません。

もちろん、事実に基づく指摘や改善につながる意見まで無視することが正しいとは思いません。

ただ、根拠のない中傷と、改善のために必要な指摘は区別する必要があります。

SNSのコメントをすべて読むことが、自分の活動にとって本当に必要なのか。

私は、そのように考えるようになりました。

心理学で考える「嫌な情報を見ない」という選択

心理学者James Grossは、1998年に感情調整に関するレビュー論文を発表しました。

この研究では、人間が感情を調整する過程の一つとして「状況選択」が挙げられています。

状況選択とは、自分がどのような感情を経験しやすいかを考え、接する状況を選ぶことです。

例えば、強いストレスを感じる状況に接する機会を減らすことも、その一つとして考えられます。

私がSNSのコメントを見ないようにしていることも、こうした感情調整の考え方と関連づけられそうです。

不快なコメントを見てから、気持ちを落ち着かせようとする。

その方法もあるでしょう。

しかし、そもそも不快な情報に接する機会を減らすという方法もあります。

私の場合、投稿後のコメントを確認しなくなってから、知らない人からの批判を気にすることはほとんどなくなりました。

ただし、嫌な情報をすべて避けることが、常に望ましいわけではありません。

仕事に必要な連絡や、改善に役立つ批判、現実の問題への対応まで避けてしまえば、かえって問題が大きくなることもあります。

大切なのは、自分にとって必要な情報と、ただストレスを増やすだけの情報を区別することだと思います。

SNSで本当にストレスになるのは、批判だけではなかった

コメントを見ないようにすることで、他人からの批判はほとんど気にならなくなりました。

しかし、SNSには別のストレスがあると感じています。

それは、他人の投稿を見て、自分と比較してしまうことです。

私はSNSで、旅行を楽しんでいる人や、家族と幸せそうに過ごしている人、事業で大きな結果を出している人の投稿を見ることがあります。

そうした投稿を見ると、羨ましいと感じることがあります。

単純に「自分も頑張ろう」と前向きになることもあるかもしれません。

しかし、私の場合は、それよりも次のような気持ちが強くなります。

「自分もこれだけ頑張っているのに、なぜあの人のように幸せそうに過ごせないのだろう」

仕事を頑張っていても、責任やトラブルが増えたり、思うように休めなかったりすることがあります。

一方で、SNSには旅行や家族との楽しい時間、事業の成功など、他人の人生の良い部分が流れてきます。

それを見ていると、自分の生活には何か足りないものがあるように感じてしまうのです。

他人から批判されるストレスとは違い、これは自分自身が他人と比較することで生まれるストレスです。

なぜ他人の幸せを見ると、自分が不幸に感じられるのか

心理学には「社会的比較理論」という考え方があります。

1954年、心理学者Leon Festingerは、人間が自分の能力や考え方を評価するとき、他人と比較することがあると論じました。

社会的比較には、自分より優れていると感じる人と比較する「上方比較」などがあります。

上方比較は、目標や向上心につながる場合もあります。

しかし、比較することで自分が劣っていると感じたり、不満が強まったりすることもあります。

SNSは、こうした比較が起こりやすい環境です。

2014年にVogelらが発表した研究では、SNS上の社会的比較と自尊感情の関係が調べられました。

研究では、Facebookの利用頻度が高い人ほど自尊感情が低いという関連が見られ、その関係に上方比較が関わっていることが示されました。

また、実験では、比較対象となる人物のプロフィールに優れた特徴が示されている場合、そうではないプロフィールを見た場合よりも、参加者の一時的な自尊感情や自己評価が低くなる結果が報告されました。

ただし、SNSを利用すれば必ず自尊感情が下がるという意味ではありません。

利用方法や個人の性格、周囲との関係などによって影響は変わります。

それでも、他人の成功や幸福を見て自分と比較してしまう心理は、私自身の経験とも重なる部分があります。

SNSでは他人の人生の一部分しか見えていない

私がSNSで羨ましいと感じるのは、旅行、家族との幸せそうな時間、事業での成功などです。

しかし、よく考えてみると、そこに映っているのはその人の人生の一部分でしかありません。

旅行の写真を投稿している人も、普段は仕事や人間関係で悩んでいるかもしれません。

幸せそうな家族にも、外からは見えない問題があるかもしれません。

事業で大きな結果を出している人も、経営上の責任やトラブルを抱えているかもしれません。

もちろん、実際にその人が幸せに暮らしている可能性もあります。

重要なのは、SNSの投稿だけでは、その人の生活全体を知ることができないということです。

それにもかかわらず、私は他人の良い場面と、自分自身の普段の生活を比較してしまうことがあります。

自分の生活については、楽しいことも苦しいことも知っています。

しかし、他人については、投稿された一部の情報しか見えていません。

このような情報の違いがあるまま比較しても、公平な比較にはならないのではないでしょうか。

頭ではそう理解していても、羨ましいという感情が生まれることはあります。

それが人間の心理の難しいところだと感じます。

SNSを見るだけの時間が幸福感に影響する可能性

2017年にVerduynらが発表したレビュー論文では、SNSの利用方法と主観的幸福感の関係が検討されています。

研究では、SNS上で他人の投稿を眺めるような受動的な利用は、社会的比較や羨望と関係し、幸福感に悪影響を及ぼす場合があると報告されています。

一方で、他人と交流したり、社会的なつながりを作ったりする能動的な利用には、幸福感に良い影響を与える可能性も論じられています。

ただし、SNSの利用を受動的か能動的かだけで分類すれば、すべての影響を説明できるわけではありません。

2020年に発表された社会的比較に関するレビューでも、SNS上での比較は人や利用状況によって異なり、ときには前向きな影響をもたらすこともある一方、上方比較が幸福感の低下と結びつくことがあると整理されています。

私自身、SNSには良い部分もあると考えています。

動物に関する情報を広く届けたり、活動を知ってもらったりできることは大きなメリットです。

ただ、そのために他人の投稿を長時間見続ける必要があるのかというと、必ずしもそうではありません。

情報発信のためにSNSを使うことと、他人の投稿を見続けることは、分けて考えてもよいのかもしれません。

SNSを見なければ、他人と比較するストレスは減るのか

私は、SNSを見る時間を減らせば、他人と比較して落ち込むこともかなり減るのではないかと考えています。

実際に、コメントを見ないことで、他人からの批判を気にすることはほとんどなくなりました。

同じように、他人の投稿を目にする機会が減れば、比較するきっかけも少なくなると思います。

ただし、これは現時点での私の考えであり、SNSの閲覧時間を減らすことで比較によるストレスがどの程度減るかを、自分で検証したわけではありません。

また、SNSを見なくても、現実世界で他人と比較することはあります。

そのため、SNSをやめるだけですべての悩みが解決するわけではないでしょう。

それでも、SNSにどれだけの時間を使うのか、どのような投稿を見るのかを自分で選ぶことには意味があると思います。

SNSで疲れないために、私が大切にしていること

これまでの経験を振り返って、SNSとの付き合い方で大切だと思うことがあります。

1.「いいね」の数を自分の価値だと思わない

SNSでは、投稿に対する「いいね」や再生数などが数字で表示されます。

そのため、数字が多いと評価されているように感じ、少ないと評価されていないように感じることがあるかもしれません。

しかし、私は「いいね」の数が、その人自身の価値を表しているわけではないと思います。

SNSの反応には、投稿内容だけでなく、閲覧した人の興味や投稿が届く範囲など、さまざまな要素が関係します。

そもそも、人間としての価値をSNSの数字だけで測ることはできません。

投稿の反応が良くなかったからといって、自分自身に価値がないわけではないのです。

2.合わない人とは無理に付き合わない

SNSでは、さまざまな価値観を持つ人と接することになります。

考え方が違う人がいるのは自然なことです。

しかし、だからといって、すべての人と無理に付き合う必要はないと思います。

根拠のない中傷を繰り返す人や、攻撃的な言葉を向けてくる人とは、距離を置くという選択肢があります。

ブロック機能を使うことも、その一つです。

相手を説得し続けたり、すべての批判に反論したりする必要はありません。

もちろん、正当な指摘や改善につながる意見は別です。

しかし、自分にとって負担が大きいだけの関係を、無理に維持する必要はないと思います。

これはSNSだけでなく、現実の人間関係についても同じだと考えています。

合わない人と無理に付き合うより、自分が大切にしたい人との時間を増やしたいです。

3.SNSに自分の時間を使いすぎない

私がコメントを見なくなった理由の一つは、SNSに自分の時間を使いたくなかったからです。

情報発信することには意味があると思っています。

しかし、投稿した後に何度も反応を確認したり、批判的なコメントへの対応に時間を使ったりすることは、自分にとって優先順位が高くありません。

自分の時間には限りがあります。

仕事、動物の世話、健康、好きな人との時間など、大切にしたいことはほかにもあります。

だからこそ、SNSを使う目的を明確にして、必要以上に時間を使わないことが大切だと思います。

SNSをやめる必要はない。付き合い方を選べばいい

SNSには便利な面があります。

自分の考えを多くの人に伝えたり、同じ関心を持つ人とつながったり、社会の問題を知ってもらったりすることができます。

私も動物の情報を発信するうえで、SNSのメリットを感じてきました。

一方で、批判的なコメントや、他人との比較など、ストレスにつながる部分もあります。

大切なのは、SNSを使うか使わないかという二者択一ではなく、自分に合った使い方を選ぶことなのではないでしょうか。

私の場合は、投稿したら基本的にコメントを見ない。

そして、他人の投稿を見て自分と比較してしまう時間も減らしていきたいと考えています。

SNSの反応によって、自分の生活や気持ちを必要以上に左右されたくないからです。

まとめ:SNSでの評価と、自分の幸せは別のもの

私は長年、動物に関する情報をSNSで発信してきました。

そのなかで、事実と異なる批判的なコメントを受けたこともあります。

最初は腹が立ちましたが、今は基本的にコメントを見なくなり、ほとんど気にならなくなりました。

しかし、他人の旅行や幸せそうな家族、事業の成功を見ると、羨ましくなり、自分と比較してしまうことがあります。

「自分も頑張っているのに、なぜあの人のように幸せそうに過ごせないのだろう」

そう感じることもあります。

ただ、SNSに映っているのは、その人の生活の一部分です。

他人の投稿だけを見て、自分の人生と公平に比較することはできません。

そして、SNSの「いいね」や再生数は、自分自身の価値を決めるものではありません。

私がこれからも大切にしたいのは、SNS上でどのように評価されるかではなく、現実の生活で何を大切にして過ごすかということです。

合わない人とは無理に付き合わない。

必要であればブロックする。

SNSに使う時間を減らし、自分が本当に大切だと思うことに時間を使う。

SNSで多くの人から評価されることと、自分が幸せに生きることは、必ずしも同じではないのです。

私はこれからもSNSを情報発信の手段として活用したいと思っています。

ただし、SNSに自分の時間や気持ちを支配されるのではなく、自分の意思で付き合い方を選んでいきたいです。


参考文献

  1. Baumeister, R. F., Bratslavsky, E., Finkenauer, C., & Vohs, K. D. (2001). Bad Is Stronger Than Good. Review of General Psychology, 5(4), 323–370.
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    Redirecting

※この記事は筆者自身の経験と心理学研究をもとにした考察です。SNSの心理的な影響には個人差があり、すべての人に同じ結果が生じることを示すものではありません。

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