なぜ人は「自分だけは大丈夫」と思ってしまうのか?帯状疱疹を経験して考えた楽観バイアスの心理学

生活の中の心理学

「自分は大きな病気にならないだろう」

「健康には気を使っているから大丈夫」

「今まで病気になっていないのだから、これからも大丈夫だろう」

そんなふうに考えたことはないでしょうか。

私自身、以前は病気になることをあまり考えていませんでした。

普段から健康に気を使い、筋トレなどの運動を続けていました。そして、ここ数年は大きな病気にもなっていませんでした。

そのため、自分が病気になるということを、どこか他人事のように感じていたのです。

特に帯状疱疹については、自分には縁のない病気だと思っていました。

しかし、実際に帯状疱疹と診断されました。

そのときに最初に感じたのは、「なんで自分が」という気持ちでした。

発症から約1か月が経っても、朝起きるのがつらく、以前の体調には戻っていません。

今振り返ると、発症前から疲れがたまり、仕事をしたくないと感じる日もありました。

それでも私は、仕事や動物の世話を続けなければならないと考えていました。

なぜ人は、健康に気を使っているだけで、自分は大丈夫だと感じてしまうのでしょうか。

そして、自分の限界を感じていても、なぜ休むことが難しいのでしょうか。

今回は、帯状疱疹を経験した私自身の話と、心理学の「楽観バイアス」という研究をもとに考えてみたいと思います。

健康に気を使っているから、自分は病気にならないと思っていた

私は普段から健康に気を使っています。

筋トレなどの運動も続けてきました。

ここ数年は大きな病気をすることもなく、健康でいることが当たり前になっていました。

そのため、病気になる可能性について、あまり深く考えていなかったように思います。

もちろん、健康的な生活を続けることには意味があります。

適度な運動や十分な睡眠、バランスの良い食事などは、健康を維持するうえで大切です。

しかし、健康に気を使っていることと、病気にならないことは同じではありません。

今まで病気をしていなかったからといって、今後も病気にならない保証はないのです。

頭では理解できる話ですが、自分自身のことになると、なかなか現実的に考えられませんでした。

私の場合、健康への自信が、病気になる可能性を考える機会を減らしていたのかもしれません。

突然の帯状疱疹。「なんで自分が」と思った

帯状疱疹と診断されたとき、私は驚きました。

自分がなるとは、ほとんど想像していなかったからです。

最初に思ったのは「なんで自分が」ということでした。

健康に気を使っているし、運動もしている。

何年も大きな病気をしていない。

だから、自分は大丈夫だろう。

そんな考えがあったのだと思います。

しかし、実際には病気になりました。

そして、病気になってから気づいたことがあります。

健康に自信があることと、自分の体の限界を理解していることは、必ずしも同じではないということです。

私は健康に気を使っていましたが、日々の仕事や責任による疲労を十分に考えていなかったのかもしれません。

ただし、ここで一つ区別しておきたいことがあります。

私が疲れていたことと、帯状疱疹になったことの間に、直接的な因果関係があったと断定することはできません。

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスが体内で再活性化することによって発症する病気です。

発症には年齢や免疫状態などが関係し、個々のケースで原因を一つに特定できるとは限りません。

私が今回考えたいのは、帯状疱疹の原因を自分の生活だけに求めることではありません。

病気を経験するまで、自分の健康をどのように認識していたのかということです。

心理学でいう「楽観バイアス」とは

人間には、自分の将来について、良い出来事は起こりやすく、悪い出来事は起こりにくいと考える傾向が見られます。

心理学では、これを「楽観バイアス(Optimism Bias)」と呼びます。

1980年、心理学者Neil Weinsteinは、将来の出来事に対する人々の予測を調べる研究を発表しました。

研究では、大学生に対して、さまざまな良い出来事や悪い出来事が自分に起こる可能性を、ほかの学生と比較して評価してもらいました。

その結果、参加者は平均的に、良い出来事は自分に起こりやすく、悪い出来事は自分に起こりにくいと判断する傾向を示しました。

例えば、良い仕事に就くことや、幸せな生活を送ることについては、自分の可能性を高く見積もる。

一方で、事故や病気などの好ましくない出来事については、自分の可能性を低く見積もる。

こうした傾向が確認されたのです。

ただし、この研究は、すべての人が必ず楽観的な判断をするという意味ではありません。

また、私自身が本当に平均より病気のリスクを低く見積もっていたかどうかは、当時の認識を客観的に測定していないため分かりません。

それでも、「自分は大丈夫だろう」と感じていた経験を理解するうえで、参考になる心理学の考え方だと思います。

なぜ「今まで大丈夫だったから、これからも大丈夫」と思うのか

私が病気になると思っていなかった理由の一つは、ここ数年、健康に過ごせていたことです。

大きな病気をしていないという経験が、自分は健康だという安心感につながっていました。

もちろん、過去の健康状態は、将来の健康を考えるうえでも重要な情報です。

しかし、過去に問題が起きていなかったことは、今後も問題が起きないことを保証するわけではありません。

1982年、Weinsteinは、健康上の問題に対する楽観的な判断についても研究しました。

この研究では、100人の大学生が45種類の健康や生活に関するリスクについて、自分と他人の可能性を比較しました。

その結果、多くのリスクについて、自分は平均的な人よりも遭遇する可能性が低いと考える傾向が確認されました。

また、その傾向には、問題を自分でコントロールできると思う程度や、過去に同じ問題を経験したことがないことなどが関係していました。

これは私にとって興味深い研究です。

私は運動を続け、健康に気を使っていました。

そのため、自分の健康をある程度コントロールできていると感じていたのかもしれません。

そして、過去に大きな病気をした経験がなかったことも、自分は病気にならないだろうという感覚につながっていた可能性があります。

健康管理はもちろん大切です。

しかし、健康管理をしているからといって、すべての病気を防げるわけではありません。

健康への努力と、健康を過信しないこと。

この二つを両立させる必要があるのだと思います。

人は自分の予想に反する情報を受け入れにくいのか

楽観バイアスについては、その後も研究が進められています。

2011年、Tali Sharotらは、人が将来に関する新しい情報を受け取ったとき、予測をどのように更新するのかを調べました。

研究では、参加者が将来の好ましくない出来事について、自分の予測より良い情報を得た場合と、悪い情報を得た場合で、予測の修正に違いが見られました。

全体として、自分が予想していたより良い情報を得た場合には予測を修正しやすく、悪い情報に対しては修正が小さくなる傾向が示されました。

つまり、人間は必ずしも、与えられた情報を同じ重みで受け止めるわけではないということです。

ただし、この実験結果が、私個人の健康判断にそのまま当てはまると断定することはできません。

それでも、自分にとって都合の良い情報と、都合の悪い情報を、知らず知らずのうちに違う重みで捉えている可能性について考えさせられます。

私は健康に気を使っていました。

運動もしていました。

そして何年も病気になっていませんでした。

そうした良い材料がある一方で、疲労がたまっていることについては、十分に向き合えていなかったのかもしれません。

病気になる前から、朝起きるのがつらかった

今振り返ると、帯状疱疹になる前から、体や気持ちに変化がありました。

朝起きることがつらく、仕事をまったくしたくないと感じることがありました。

その年は、新しいことに次々と挑戦する一年でした。

新しいことを始めれば、それまで経験したことのない問題が発生します。

仕事でミスやトラブルが起きることも多く、その対応に追われていました。

新しい事業に挑戦すること自体は、自分が望んでしていることです。

しかし、好きなことをしているからといって、疲れないわけではありません。

仕事が順調なときもあれば、思うようにいかないときもあります。

自分が始めた仕事だからこそ、問題が起これば自分が対応しなければならないという責任もあります。

そうした日々が続くなかで、疲れがたまっていたのだと思います。

ただし、朝起きるのがつらかったことや仕事への意欲が低下していたことが、帯状疱疹の前兆だったとは限りません。

こうした症状には、睡眠不足や心理的な負担、さまざまな健康上の要因が関係する可能性があります。

私が反省しているのは、症状の原因を自分で正しく判断できなかったことではありません。

体や気持ちに変化が起きていることを感じながら、休息を十分に取れない生活を続けていたことです。

休みたいと思っても、休めない理由があった

では、なぜ疲れていると感じながら、仕事を続けていたのでしょうか。

理由は、単純に仕事が好きだったからではありません。

私は自営業です。

自分が仕事を止めれば、収入に影響する可能性があります。

そして、養鶏もしています。

鶏は生き物ですから、休日だからといって世話をしないわけにはいきません。

餌や水を用意し、健康状態を確認しなければなりません。

体調が悪いからといって、動物たちの生活まで止めることはできないのです。

そのため、朝起きるのがつらく、仕事をしたくない日でも、自分に言い聞かせていました。

「最低限でいいから、必要なことだけは動こう」

すべてを完璧にこなそうとしていたわけではありません。

できる限り仕事を減らしても、やらなければならないことは残ります。

だから、最低限必要なことだけは続けようとしていました。

これは楽観バイアスだけでは説明できない問題です。

病気になる前には、自分の健康を過信していた可能性があります。

しかし、疲れを感じるようになってからは、休みたくても休みにくい現実的な責任がありました。

体が疲れていることに気づくことと、実際に休める環境があることは、別なのです。

帯状疱疹から1か月経っても、体調は戻っていない

帯状疱疹と診断されてから約1か月。

私はまだ、以前の体調には戻っていません。

朝起きることはつらく、疲れが取れていないと感じています。

そして、体も心も限界に近いのではないかと思うことがあります。

それでも、心のどこかで「頑張らなければ」と考えてしまいます。

長い間、自分で事業を運営し、動物たちの世話を続けてきたからかもしれません。

仕事や世話をしなければならないという気持ちは、簡単にはなくなりません。

しかし、今は、その気持ちが落ち着くまでは無理をしないようにしたいと考えています。

体調が戻らないまま頑張り続けることが、必ずしも将来の自分にとって良い結果につながるとは限らないからです。

なお、帯状疱疹の経過には個人差があります。

皮膚症状が改善しても痛みなどが続くことがあり、また、長引く疲労や意欲の低下には帯状疱疹以外の原因が関係している可能性もあります。

強い疲労や朝起きられない状態が続く場合は、自己判断で我慢せず、医療機関に相談することが大切です。

好きなことをしていても、疲れはたまる

今回の経験から、私は一つのことを強く感じました。

それは、好きなことをしていても疲労はたまるということです。

動物のためになる活動は、自分が望んでしていることです。

新しい事業に挑戦することにも、やりがいがあります。

しかし、どれだけ好きな活動であっても、体を使い、頭を使い、責任を負えば負担は生じます。

そして、楽しい活動と、トラブルへの対応は同じではありません。

新しいことに挑戦すると、予想していなかった問題が起きることがあります。

その問題に対応し続けることは、精神的にも負担になります。

私は今回、好きなことをしているという理由だけで、自分の疲れを軽く考えるべきではなかったと思いました。

やりたいことがたくさんあるのは、悪いことではありません。

しかし、すべてを同時に、常に全力で進めようとすれば、どこかで無理が生じるかもしれません。

人間は、毎日100%の力で生き続けられるわけではないのです。

体からの小さなメッセージを見逃さない

帯状疱疹を経験してから、体からの小さなメッセージを見逃さないようにしたいと考えるようになりました。

例えば、朝起きるのが以前よりつらくなった。

十分に寝たつもりでも疲れが取れない。

仕事への意欲が極端に低下している。

以前は普通にできていたことが、負担に感じられる。

こうした変化があったとき、単に気合いが足りないと考えてしまうこともあるかもしれません。

しかし、体調や気持ちの変化には、何らかの理由がある可能性があります。

もちろん、すべての疲労が病気を意味するわけではありません。

一時的な疲れであれば、休息によって回復することもあります。

ただ、普段と明らかに違う状態が続く場合には、生活を見直したり、必要に応じて医療機関に相談したりすることが大切だと思います。

私自身、以前は健康に自信がありました。

しかし、今回の経験によって、健康に気を使っている人でも、自分の体調を過信しないことが大切だと感じるようになりました。

10年前の自分に伝えたいこと

もし帯状疱疹になる前の自分に、一つだけアドバイスできるとしたら、何を伝えるでしょうか。

私の答えは、明確です。

「自分の健康を過信しないこと」

運動しているから大丈夫。

何年も病気をしていないから大丈夫。

健康に気を使っているから大丈夫。

そうした考えには、自分を安心させる面があります。

しかし、どれだけ健康に気を使っていても、病気になる可能性はあります。

そして、病気にならなかったとしても、疲れがたまることはあります。

健康への努力を続けることは大切です。

ただし、努力していることを理由に、自分の体の限界を無視するべきではありません。

私はこのことを、実際に病気になるまで十分に理解できていなかったのだと思います。

人生は長距離走。毎日全力で走る必要はない

今回の経験から、仕事や人生に対する考え方も少し変わりました。

以前から、仕事には頑張らなければならない時期があると思っています。

新しい事業を始めるときや、大きな問題を解決しなければならないときには、普段以上の努力が必要になることもあります。

私は、頑張ること自体が悪いとは思っていません。

しかし、そうした時期ばかりを繰り返していては、いつか無理が生じる可能性があります。

人生は短距離走ではなく、長距離走です。

一時的に全力で走ることはあっても、何十年も同じ速度で走り続けることはできません。

だからこそ、長期的な計画を立てる必要があると思います。

今は何を優先するのか。

どの仕事を減らすのか。

休息する時間をどのように確保するのか。

自分が動けないときにも、最低限必要なことが続けられる仕組みをどう作るのか。

こうしたことまで含めて、将来を考えていきたいです。

私には、これからもやりたい仕事があります。

動物のためになる活動も続けたいと思っています。

しかし、そのためには、自分自身が健康でいることも大切です。

今頑張ることだけでなく、10年後、20年後も活動を続けられる状態を作ること。

それが、今の私にとって重要な目標になっています。

健康への楽観は、必ずしも悪いことではない

ここまで楽観バイアスについて考えてきましたが、私は楽観的な考え方そのものが悪いとは思いません。

将来に希望を持つことは、新しい挑戦をするうえでも大切です。

何をするにも失敗や病気の可能性ばかり考えていては、行動することが難しくなる場合もあるでしょう。

ただし、前向きに考えることと、リスクが存在しないと思い込むことは違います。

「自分は健康に気を使っているから、これからも健康でいられるように努力しよう」

そのように考えることと、

「自分は健康に気を使っているから、病気にはならない」

と考えることは、似ているようで違います。

前者は、将来のために行動しようという考え方です。

後者は、自分には悪い出来事が起こらないという思い込みにつながる可能性があります。

私は、前向きな気持ちは持ちながらも、現実的なリスクから目をそらさないようにしたいと思っています。

まとめ:自分だけは大丈夫と思わず、長く続けられる人生を考える

私は以前、自分が大きな病気になるとは思っていませんでした。

健康に気を使い、運動もしていて、ここ数年は病気になっていなかったからです。

しかし、実際に帯状疱疹になりました。

診断されたときには「なんで自分が」と感じました。

そして、約1か月が経った今も、以前の体調には戻っていません。

振り返ると、病気になる前から朝起きるのがつらく、仕事をしたくないほど疲れていたことがありました。

それでも、自営業としての仕事や、動物の世話を続けなければならないという責任がありました。

だから、最低限必要なことだけは動こうと、自分に言い聞かせていました。

今回の経験から学んだことは、自分の健康を過信しないということです。

健康に気を使っていても、病気になる可能性はあります。

好きなことをしていても、疲れはたまります。

そして、どれだけ頑張りたいと思っても、人間は毎日100%の力で生き続けることはできません。

私はこれからも、新しいことに挑戦したいと思っています。

動物のためになる活動も続けたいです。

だからこそ、今までと同じように頑張り続けることだけが正解ではないと感じています。

人生は長距離走です。

今、頑張らなければならない時期もあるでしょう。

しかし、そればかりを繰り返すのではなく、休む時期も含めて長期的に計画を立てる。

目の前の成果だけでなく、10年後、20年後も元気に活動できることを大切にする。

私にとって今回の帯状疱疹は、健康への考え方と、これからの働き方を見直すきっかけになりました。

「自分だけは大丈夫」と思い込むのではなく、体からの小さなメッセージにも耳を傾けていきたいと思います。


参考文献・資料

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    Unrealistic optimism about susceptibility to health problems - Journal of Behavioral Medicine
    In this study, 100 college students compared their own chances of experiencing 45 different health- and life-threatening...
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    How unrealistic optimism is maintained in the face of reality - Nature Neuroscience
    This study reports that people are worse at incorporating negative information when updating their beliefs. Correspondin...
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    Clinical Overview of Shingles (Herpes Zoster)
    Learn about shingles, clinical features, cause, risk factors, complications, and prevention.

※本記事は筆者自身の帯状疱疹の経験と心理学研究をもとにした考察です。帯状疱疹の発症原因を疲労やストレスだけに結びつけるものではなく、病気の診断・治療を目的としたものでもありません。

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